妻の奇声




妻は気に入らないことがあると、
よく奇声を上げます。
ひとり部屋に籠もり。
誰もいないところで大きな音を立てます。
とても大きな音なので、
たとえ締め切っていても、その奇声は隣の部屋や
外にも聞こえるほどです。
僕の仕事場でもその奇声は聞こえ、
聞き慣れていない僕はそれが怖くて堪りません。
最初は驚いて妻を見に行きましたが、
いまでは奇声の原因が僕にもあると思っているので
見に行くことはありません。
ただその声を聞く度に、包丁を持ってやってくるんじゃないか。
食べ物の中に何か入っているんじゃないか。
寝ている間に何かされるんじゃないか。
という思いが頭の中を巡ります。
妻にしてみれば、きっと堪りきったストレスからの
脱却方法なのだと思います。
僕には強烈なストレスですが。
今日も妻の奇声を聞きました。
恐怖のあまり、仕事を放り出して飛び出してきました。
僕が逃げ出すことは、良くないと思っているのですが、
声の聞こえる場所にいたら、
刃物を持っている想像をしてしまうのです。
ビクビクしながら必要最低限のものを持って
ダッシュで飛び出してきた僕。
いけないと思いながらも、
自然と足が速まってしまったのは、
恐怖以外の何ものでもないと思うのです。