近隣での火事




まさかまさかの出来事は、僕の家から30mほどのところで起こりました。
同じ地区の一軒家が火災に見舞われました。

僕の住む地区は、全戸200件ほどの家々が建つ住宅地です。
そのなかを通り毎に15個ほどのブロックに分けているのですが、道路に囲まれながら、まるで背中合わせのように家が建ち並びます。
僕の家もそういう形で並ぶひとつでした。

その日は風の強い一日でした。
夜になるとどこからともなく焦げ臭い香りが漂い、家の中にもかかわらず、普段と違う雰囲気にも感じられるような気がしていました。

妻がひとこと言いました。「なんか焦げ臭い」と。

僕もそれは感じていましたが、気にしないでいました。
しかし妻のひと言を切っ掛けに、妙な不安を感じて窓から外を眺め、特に変わったこともないことを確かめてから、「やはり」と外に出ました。

すると、周囲一面を覆う煙。
どこかでイベントでもやっているのか?と思いながらも、そんなこともないだろうと怪しみ、パジャマのズボンだけを履き替えて、近所を歩いてみることにしました。

何の考えもなく風上に向かって歩き始めると、すぐに近所の家の軒下から煙が染み出しているのを見つけました。
どう考えても、その様子は火事でしたが、その瞬間はすぐに判断が付かず、信じられない気持ちで手元のスマホを見ます。

119という番号は頭に浮かんでいますが、市外局番のない電話番号など掛けたこともなく、どうやったら良いのかと考えながらも、火事の家へと近づいて行きます。
ようやく家の前で消防署へ電話をすることができ、「消防ですか?救急ですか?」という最初の質問に答えることができました。

ただ、僕は目の前で起きているものが火事と信じることができず、言葉の後ろに「たぶん」と付けていました。
消防署にしてみれば、歯切れの悪い応答だったと思います。

電話をしている間にも、隣の住人が異変に気が付いて出てきて、僕はそれを見つけて「消防には電話してます!」と叫びました。
僕は電話を繋いだまま様子を伝え、近所へは玄関を叩いて火事ということを伝え。

僕が家に戻って事の次第を伝えたのは、もう真っ赤な炎が立ち上ってからでした。
火の粉が舞う様子が見え、とりあえず庭にある燃えそうなものを全てしまわなければならないと、物置に何もかもをしまいます。
その間にも妻は荷物をまとめ、車に詰め込んで子供と一緒に出ていきました。

僕は、まずは荷物をまとめても様子を見るべきだとは思っていましたが、、、
妻の慌てようを見ていると、なだめることが難しいことを思いました。
きっと、何も話しを聞いてくれないと。。。

それからは火の粉の舞う様子を見ながら、近隣での消火活動に手を出し、特になんの役にも立たないことを知りました。
せめて引火しないようにと家の前から火の粉の様子を見ていると、知らない人までも敷地に入り込んで火事の様子を見に来ます。

中には火事場泥棒もいるかもしれないと、僕は野次馬の振りをしながら、周りにいる人の様子を伺いました。

そうこうしているうちに、警察署から電話があり、第一通報者ということで、近くにいる警察官へ声を掛けるように言われました。
すると、しばらく待機をしているようにとのこと。

家の前で、先ほどと変わらずに野次馬の振りをして、火の粉の様子を見ながら、だんだんと火が小さくなっていくのを見ていました。

おもえば、この時間に妻へ様子を伝える必要があったと思います。
妻はこのとき、近くの公民館へ避難をしながら、すでに家に燃え移っているのだろうと諦めていたそうです。

やがて警察官が僕の家へやってきました。
その様子を見て、庭に入り込んでいた野次馬は帰っていきます。
警察官は、その場で調書を取るというので、僕は明るいところへと家の玄関へ招き入れました。

その2・3分後、妻が帰ってきました。
真っ青な顔で、警察官がいるにもかかわらず、バタバタと貴重品や大事そうなものを玄関へ出してきます。

子供がいるまえでのことだったので、この特殊な状況から、まずは子供を落ち着かせたくて、妻に「落ち着いて」と普段通りに声を掛けたのですが、いっこうに聞き入れてくれる様子も無く。
慌てふためいているだけ。

僕は子供を膝の上に抱き、警察の質問に答えていました。

その後、妻は慌てたまま、子供を連れて僕の実家へ。
物々しい雰囲気と、どこからともなく声や音がする状況、焦げ臭い身なりといった普段と違う様子ではなく、落ち着いたところで眠りに就かせてあげたいという思いからでした。

もちろん、僕もそこに同行するつもりでいましたが、調書の時間が想像以上に長かったことや、「夜が明けるまで様子を見ていて欲しい」という妻の言葉で、居残ることになりました。

結局、警察の調書が済んだのは2時間ほど経ってから。
もうじき日付が変わろうとい時間でした。

翌朝、消防署がやってきて調書を取っていきました。
こちらは20分ほどでしたが、後日、確認のために来ると。。。

そして、
実家へ避難をした妻は、ことの顛末をまるで調書を取るかのように事務的に訪ね、すでに嫌になっている僕は半ばぶっきらぼうに応え。
火事の最中には、警察の調書を優先して、家のことをまったくしてくれなかった、気遣ってくれなかったと不満をぶつけられました。
確かにそれはその通り。
妻の話を聞き、不安を取り除いてやることは大切なことでした。

ただ、僕にとっても特別なこと。
落ち着いて見えたと言われ、確かに落ち着いていた自覚はあったものの、確かに落ち着いていたとはも思えず、おそらくアドレナリンが最高潮で自分が自分ではないような時間だったと思いました。

ほんの数時間での出来事でしたが、なにもかもを失うかもしれない切羽詰まった状況、それを防ごうとする思いと、そこから逃れようとする思いと。
人のことよりも自分のことを思って欲しいという人と。

様々な出来事や思いが重なった時間でした。

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