空気を読まない一言




「ひとり暮らしはどうですか?」
と聞かれても「楽しいわけがないだろう」と思います。
妻とは毎日、電話をするのですが、そう毎日変わったことも無いので話題もありません。
僕はその時間帯でも仕事をしていることがあるので、話が無ければないで電話を切りたいこともあります。
それを露骨に「切りたい」と伝えてしまうと機嫌を損ねてしまうのですが、だからといって新しい話題も無く時間を引き延ばすことに楽しさも感じず。
むしろ無駄なことだと感じてしまって表情にも出てしまいます。
時間を引き延ばそうとした妻からのひと言は
「ひとり暮らしはどうですか?」でした。
僕も気持ち良く妻を送り出しましたが、決して喜んで送り出しているわけではありません。
数日前に体調を崩した母のため、心配だから実家で看病をしたいと言った妻のため。
僕は仕事に集中できるから、一日のほとんどを自分で自由にできるから。
そういう前向きな思いとともに送り出しました。
家族3人で暮らそうとして建てたばかりの家で、誰が好き好んでひとり暮らしをするのでしょうか。
二日や三日ならともかく、僕だけが暮らすための家では無いのです。
広すぎる部屋と静かすぎる空間。
そこにあったはずの賑やかな声は、僕の足音や生活音しか聞こえません。
夜になれば、僕がいる一部屋を除いて真っ暗な家なのです。
留守の妻の元へ郵便物が届き、それはリビングに山になっていきます。
ふたり分の食料は冷蔵庫に残ったまま、なかなか消費できずに10日以上賞味期限が切れたものもあります。
そんな状態で、しかも仕事が忙しい時期に。
ただ時間を引き延ばして、無い話題を作って話し続けるのは僕にとって苦痛なものに変わります。
「今日も元気だった・変わりなかった」
それだけで十分な日もあるのです。
ましてや僕らが話していれば、その物音で子供は目を覚ますこともあるのです。
僕はその方が気になります。
こっちのことは良いから子供を見て欲しいと伝えても、妻にはその思いは伝わりません。
少しくらい騒いでも大丈夫と、僕からすればおかしな方向に肝が据わっています。
何の空気も読もうとせず、不用意な一言は辞めて欲しいのです。