彼女だった妻からの手紙

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誰でも手元に持っていたい自分だけの物があると思います。
形に残るものでも、思いとして残るものでも。

僕の場合は思い出の品々が捨てられず、秘密にしてでも手元に置いておきたい物です。

つい先日、家の中を片付けていたところ、かなり昔に受け取った手紙を見つけました。
開いてみると、まだ付き合っていたころの妻からの手紙でした。

「そういえば何通もこんな手紙を受け取っていた」
そんな記憶が蘇りました。

僕は過去の彼女からは必ずといって良いほど手紙を渡していました。
それは初めて付き合った彼女の「手紙を渡すとケンカをしても別れずに済む」というひとことがキッカケです。

当時の彼女は明るくハツラツとした女の子でしたが、社会に出て2年ほど経ったころから責任のある立場を任されるようになり、その重圧からか心を病むようになってしまいました。

それまで年上の僕を引っ張るように元気いっぱいだったのが、うつむくように顔をしかめるようになり、些細なことでも心を乱して僕に当たることが多くなりました。
仕事にも行きたくなくて、休日が明ける前日は気持ちが乱れるばかりか、口論が続いて眠ることができないままになることもありました。

何かイベントがある度にやり取りをしていた手紙は、そんなことから疎らになりましたが、僕にとっては大切な思い出になっていました。
どんなに口論を続けてもケンカになっても、元気だった当時の手紙を見ていると気持ちが蘇ってくるようでした。

結局、僕といることも苦痛になってしまったことと、僕自身が耐えることが続けられなかったことで関係は崩れましたが、あのときのひとことは今でも大切にしています。

妻から受け取っていた手紙は、もらったという記憶もすっかり薄れ、「誰にも見せてはいけない地雷のようなもの」と思い込んでいましたが、丁寧に気持ちが綴られたものでした。

当時の気持ちが蘇るようでそれを妻と共感できれば良いのですが、堂々と見せるのも気恥ずかしいような、今さら持ち出すこともできないような。
まさかこのことで「他の誰かの手紙も持っているのでは?」と疑われることもあるのでは?と考えるところも・・・

妻からの手紙を読み返してみると、今からは考えられないような可愛らしいもので、確かに僕は妻と付き合っていたのだなと思えるものでした。
いつから妻も僕もこういうやり取りをしなくなったのだろうと思いながら、昔の手紙を開いては仕舞い片付けは進まないまま。

この手紙は、おそらくこれから何かある度に開いては気休めや心を鎮めるキッカケに使うのだと思います。

大切に閉まってあったものが妻からのもので安心しました。

そういえば、捨てられずに隠し持っていたものもあったはず・・・。
妻以外の彼女だった大切な思い出の手紙。
あれはどこへ行ったのか・・・

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